ピンチの運送会社が倒産を回避する方法とは?

ピンチの運送会社が倒産を回避する方法

燃料費の高騰。コロナ融資の返済開始。ドライバー不足。運送会社の倒産ニュースのそばには他人事とは思えないワードが並びます。
「自分のところはまだ大丈夫」と思いたいが、どうしても悪い想像が頭から離れない。そんなあなたが少しでも前向きになれる情報をお届けします。

業績を回復させるには

まずはメンタル

業績を回復させるには、まず、社長であるあなたのメンタルを回復させるのが先です。把握しなければならないのは分かっていても、現状を知ることが恐ろしくて、会社の残預金を聞くことすらできない。会社が破産したら、自分も自己破産して、一家離散してすべてを失うかもしれない。相当な恐怖です。でも、会社がダメになったからと言って、必ずそうなるわけではありません。自己破産せず、再起してもう一度会社を立ち上げた社長さんだっています。だからまずは傾いた自分の会社と正面から向き合って、必ず立て直すという強い前向きな気持ちを持ってください。大丈夫、命までとられることはありません。

入るお金と出るお金

商売の基本は安く買って、高く売ることです。「そんなの当たり前じゃないか」と言われそうですが、苦しい状況の会社は「入ってくるお金よりも出ていくお金の方が多いから赤字になっている」ということが分からなくなっています。入るお金を増やし、出るお金を減らすしか方法がないのに「増やせない」「減らせない」「方法が分からない」と現実を見ようとしなければ何も変わりません。よくあるのは「まず減らす方から始める」という方法です。減らすのは使うのをやめたり控えることなので、割と簡単に実行できます。

  • 事務所の家賃や駐車場代など
  • トラックリースの支払い
  • 燃料費、交通費
  • 電話料金(携帯も含む)
  • 法人会などの会費
  • オンラインサービスの料金
  • 従業員の給与
  • 社長の給与

他にもあるでしょうが、こんな感じでリストアップして、必要のない経費がないか確認してみてください。オンラインミーティングなんてしないのにまわりがやっているから、という理由で契約しているサービスがあるなら解約しましょう。売却損が出るかもしれないけどトラックの減車も考えてもいいかもしれません。でも、一つだけ特大の注意事項があります。社長の給与は最後まで削ってはいけません。「従業員の手前」なんて格好つける必要は1ミリもありません。会社にもしものことがあったとき、最後まで責任を負うのが社長です。そのときの備えのためにも、社長だけは給与をもらい続けてください。

ドライバーは本当に必要なのか?

「ドライバーさえいれば」は危険

「朝、駐車場の空車トラックを見ると吐き気がする」という社長の話を聞いたことがあります。チラシ、広告、SNSのショート動画、いたるところでドライバー募集を見かけますが、だからといって「ドライバーさえいれば何とかなる」という考え方は危険です。まず、ドライバーが辞めてどれくらいの期間が経過しているか確認してください。ドライバーが入ったのはいいけど、今度は当てにしていた仕事が無くなっていた、という話をよく聞きます。そうなるとまたドライバーが辞めてしまう、という悪循環になります。また、こうやって分析するときに「仕事があると思う」とか「あるに違いない」という予測で判断する人が多くいます。自社に厳しく、冷静に分析しなければ、本当にドライバーが必要なのかどうかの答えが出ないので注意が必要です。

思い切る勇気

会社を立て直すのに必要なのは社長の勇気ある決断です。ドライバーが辞めて一定の期間が経過してしまったら、思い切って減車するのも一つの手です。「その一台から生まれる粗利も必要だし、そんなに簡単ではない」と現状をなんとか維持したい気持ちは分かりますが、損切りが必要な場面かもしれません。未償却のトラックは、粗利を生むどころか維持費を垂れ流す金食い虫です。そのトラックが稼働したときの粗利なんて、無いものをいつまでも当てにしていても、大事なキャッシュ(現金)は失われていくばかりです。買った株の値が落ちているのに「もう少し待てば戻る」と言って損切りできない人の話を聞いたとき、あなたならどう思います?

入るお金を増やす

必要な情報

2024年になったら荷主と運送会社の立場が逆転する、なんていう話をよく聞きます。でも、逆転するかどうかすら分かりませんし、「運送会社をやると客は選び放題」なんて知れ渡ったら、みんな始めるからすぐに供給過多になります。とにかく、適当な情報を当てにしてはいけません。会社の立て直しに必要なのは、荷主など取引先から、目と耳と足を使って手に入れる一次情報です。誰でも簡単に知ることができる二次情報や三次情報では稼げません。自社のネットワークから得られる一次情報だけを整理して「取引先が自社に求めているのは何か」という問いに答えを出してみてください。孫子にも「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」とあります。K・K・D経営(気合・勘・度胸)は卒業しましょう。

思考で差別化する

少し抽象的な表現になりますが、身の丈にあった事業を心がけるだけで、必要な収益を手に入れることができるようになります。

  • 今の稼働台数で荷主にどんな提案ができるのか?
  • 他社とは違うどんなサービスが提供できるのか?
  • ドライバーにどんな仕事を求めるのか?

例えば、こんな問いへの答えを考えてみてください。それが新しい営業戦略になります。「他社よりも安く走ります」は戦略でも何でもありません。しっかり、考えて、考えて、考え抜いたもので他社と勝負するのです。安売りする暇があるなら、ドライバー教育に時間を使って、作業風景のショート動画でも撮って荷主にアピールしてください。丁寧に応対し、一所懸命に働くドライバーを増やすだけでも差別化できます。さらに提案力は大きな差別化ポイントです。100台の運送会社の提案と10台の運送会社の提案が同じでは勝負になりません。それなら10台にしかできない提案で荷主を驚かせるのです。成功している経営者も、倒産寸前からV字回復した経営者も、とにかく必死で考えてきました。学歴なんか関係ありません。自分が決死の思いで生み出した会社を守るために考え抜くのです。

経営者が目指すことができるゴール

「続ける」か「破産」しかないのはウソ

会社が破産するときのことを考えると夜も眠れない。でも、安心してください。会社経営者には苦しくても続けるか、ダメになったときに破産するしか道がない、というのはウソです。おなじみのM&Aで会社を売却するという方法があります。売却と聞くと「負け」をイメージする人も多いですが、そんなことはありません。立派な資産形成の方法であり、これをつかって億以上の資産を手に入れている人もいます。試しにM&A仲介会社の話を聞いてみるのもいいでしょう。中にはしつこく契約をせまる業者がいますが、そこはスパっと断ればいいので心配ありません。他にも投資ファンドからバイアウト投資をうけるなど、あなたの会社にあった良い方法があるかもしれないので、ネットで「M&A 赤字会社」や「バイアウト投資」と検索してみてください。気分転換にもなるので良いですよ。

少しでも価値をあげておく

価値が低い会社は高く売れません。どうやったら会社の価値を高めることができるのでしょう?そのポイントとなるのが仕組みです。例えば、買収側になって考えてみてください。イケイケ社長が営業から配車までこなしている会社を買うとします。買った瞬間その社長がいなくなったら困りますよね。せっかく創業した会社をそんな評価のままにしておくのは実にもったいないことです。必要なのは仕組みです。社長がいなくても売上が上がる仕組みをもつ会社だったら、きっとあなたも「買いたい」と思うに違いありません。入るお金と出るお金の管理、営業戦略、実行部隊の業務マニュアル。これらを考え、社長がいなくてもずっとまわり続ける永久機関をつくることが、社長の成功へとつながるのです。

設計図がある会社をつくる

仕組みがない会社

辞められたら困るから従業員に頭が上がらない。相手がドライバーであれ、配車担当者であれ、社長が背負うリスクや責任の重さを考えれば、そんなのは絶対にダメです。理想は「誰が抜けても大丈夫」かつ「誰も抜けたいと思わない」というような会社にすることなんですが、現実にはなかなか難しい。でも次の三つの基本的な事項に沿って会社を設計すれば可能になります。

  1. 事業は、顧客のために行う
  2. 社長は、顧客にどんなサービスを提供するのか設計する
  3. 従業員は、社長が設計したサービスを実行する

1から優先順位が高い順に挙げました。つまり、よく聞く「従業員のために会社は潰せない」というセリフは間違いです。こんな風に優先事項が分からなくなってしまうから、削減すべき経費を見失ってしまうのです。何よりも顧客のために事業を行うことを優先してください。そうすれば、入るお金が絶えることはありません。入るお金より経費が少なくなるよう設計するだけで、黒字会社に早変わりです。このように設計がしっかりしている会社は、従業員が安心して働けるので離職率が低い傾向にあります。意外と、ドライバーも給与の高さより会社の安定感を重視しているのです。

仕組みづくりの手順

何度も言いますが、キーマンが抜けることで動かなくなる仕組みには価値がありません。そこでまずは、誰でも同じように成果を出せる仕組みをつくることから始めるといいでしょう。

【仕組みづくりの手順(例)】

  1. 荷主への営業
  2. ドライバーが決まっているトラックの荷物を確保
  3. 配車をはじめとした事務作業を標準化(誰でもできるようにすること)
  4. 仕事がオーバーフローするようになったら増車を検討
  5. ドライバーを募集

誰でも知っているけど、上手くできる人が少ない手順です。例えば、荷物の確保が確実にできていないのに「ありそうだ」という勘だけで増車するパターンをよく見ます。①から⑤を正確な順番で繰り返せば、無理なく増車することもできますし、景気の変動などで混乱するときも落ち着いて対処できるはずです。ちなみにちょっとした小話ですが、ドライバー募集は「辞めたから募集」の欠員補充と「仕事が増えたから募集」の新規補充では、新規補充の方が応募されやすいそうです。募集要項にウソを書いてもバレるので小細工はしないほうが良いですが、例えば先に荷主への営業を行い、仕事を確保してから募集をだせば、堂々と新規補充を語れます。

まとめ

この記事を読んでくれた、危機を感じているあなたに最後に伝えたいことがあります。今、もしも「家族を守れるのだろうか」という不安に潰されそうになっているのであれば、試しに「破産 社長 自宅差し押さえ」で検索してみてください。後ろ向きなキーワードの割に前向きになれる情報に出会うことができます。社長の心が折れたら本当におわりです。どれが本当かなんて関係ありません。自分と家族が幸せになれると思うものだけを信じて突き進むだけです。どうか不死鳥のごとく会社をV字回復させてください。

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