
著作者:pch.vector/出典:Freepik
2024年問題はドライバーの労働時間と運行についての問題です。これに対する取り組みについて、メディアをはじめ様々な場所で紹介されていますが、運送業界にいる我々にとっては、2024年以降の収益をどうやって確保するのかがもっとも重要な問題です。しかし、運賃交渉をしようにも、失敗して荷主に嫌われてしまったという話もないわけではありません。値上げ交渉は、ビジネス上で欠かせないスキルの一つですが、交渉が苦手な人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では2024年を控え収益性を心配している業界の皆さんに、実践しやすい値上げ交渉の方法について紹介します。
目次
交渉の基本スキル
必要となる交渉の基本スキルは、以下の4つです。
1. 荷主の立場を理解する
荷主がなぜコスト削減を望んでいるのか、その理由をしっかりと把握しましょう。相手の立場を理解し、共感することができれば、交渉の余地が生まれます。
2. 提案する価値を示す
荷主にとって、あなたが提供する運送サービスにどのような価値があるのか、明確に伝えましょう。価値を示せば、荷主は値段ではなくサービスの価値を優先することができます。
3. オプションを提供する
値上げを受け入れてもらう代わりに、別のサービスを追加提供します。過剰サービスにならないように、注意が必要なテクニックです。
4. ウォークアウェイを視野に入れる
最後の手段として、ウォークアウェイを視野に入れることも大切です。値下げに応じてもらえない場合、その取引を諦め、他の選択肢を探すことも視野に入れましょう。
成功しやすい交渉術
交渉に成功した事例から、具体的な交渉テクニックについて詳しく解説します。
1. 相手の印象を損ねない話し出し
誰にでも取り組める交渉術の一つに「自分の主張ばかり行わない」というものがあります。配車を例に出すと分かりやすいのですが、暇な時期には「荷物をください」、繁忙期には「トラックを貸してください」、と自分の都合ばかり言っている人は協力してもらえません。案外「何か困ってませんか?お手伝いしますよ。」と言われる方が印象が良いはずです。
2. 感情的にならない
2024年問題を簡単に説明した後で、荷主さんがこの件について懸念することについてお話を伺います。「そんなことをしたら、どうせ値上げへの懸念を言われるから、ますます難しくなる」と思われるかもしれませんが、そこは我慢です。
当然、コストアップについての懸念は言われますが、一度話を聞いて理解を示した後で、こちらの状況を丁寧に感情的にならずに説明することで、値上げに応じてくれる可能性が高まります。
3. 自分たちの不安ばかりを伝えない
さらに成功事例をもとにアドバイスを行うと、2024年問題ばかりを主張しないほうが良いです。運行回数の減少などで収益性に心配があるのは分かります。しかし、荷主も運んでもらえないことが増えると当然困るので、不安にならないわけがありません。
自分たちの不安から主張ばかりをしてくる相手よりも、荷主の不安を吸収し、冷静に解決策を提案してくれる相手のほうが、交渉に応じてもらいやすくなります。
4. 荷主が納得する提案力
言い方は悪いですが、2024年問題をネタにした値上げ交渉では、説得力に欠けます。なぜならば、この提案はドライバーの労働単価の増額を要求するものであり、運んでほしい荷主には何のメリットにもならないものだからです。
これに対して、燃料コストの高騰に関わる提案であればいかがでしょうか。これまで荷主の輸送コストを増やさないように、燃料コスト分を吸収してきた実績を主張することもできますし、その上で、交渉に応じてくれた際は2024年以降も変わらず運ぶ努力をすることを約束すれば、値上げに応じてくれる可能性が高まります。
まとめ
しかし、これだけの策を練り値上げに成功したとしても、両手を上げて喜んでばかりはいられません。変わらず運ぶことを約束するからには運ぶ責任があります。おおきな状況の変化に対して、感覚が麻痺してしまいがちですが「法令で運べなくなるから、今ある台数で、運べる分しか運ばない」という自分勝手な都合は荷主には通用しません。
競合という言葉があるように、企業活動をする限り競争は避けて通れないわけで、「運ばない運送会社」と「運んでくれる運送会社」であれば、選ばれるのは当然後者です。運賃交渉をするからには「是が非でも運ぶ努力」を惜しんではなりません。
自社トラックだけで運ぶことが難しくなる中で、自社と出荷繁忙期の時期がずれている傭車トラックの重要性が増します。荷主への信頼に応えることができる輸送は、他社との差別化に繫がります。輸送品質とは自社トラック・ドライバーの質と、取引関係の質で決まります。